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  • 執筆者の写真深沼悠花

バス運営論~路線とターミナル~

序論

公共交通における自動車輸送(ここではバス)は、一般に、小容量である一方で、道路さえあればどこへでも行けることから輸送の自由度が高く、旅客輸送機関の序列においては末端の輸送を担う輸送手段である。

この記事においては、Simutransにおける路線設定のあり方や拠点の理想の形についての研究、持論をまとめている。


1.路線設定

先にも述べたように、バス輸送における最大のデメリットは輸送規模の小ささである。定員乗車においては1両あたり80人が関の山であり、ことにSimutransにおいてはマス目の仕様もあって、1マスあたりに詰め込める旅客の数は鉄道と比べやや劣る(連節バスを用いれば多少はマシになるというのは置いておく)。ゆえに、バスには「設定してはならない」パターンの路線がある。


①拠点(ハブ)間輸送

拠点間輸送を主軸とする路線は混雑が発生しやすくなる。これは先にも述べた通り1マス単位あたりの輸送規模が小さいため、一定時間あたりの輸送力は鉄道等と比べ非常に劣る。旅客が集中する拠点同士を結ぶ路線はそこがボトルネックとなってしまう。大容量の輸送機関を建設するなどして対処するほうがよいと言える。

②大容量輸送機関(特に鉄道線)同士の短絡

①と類似のケースではあるが、こちらもかなり危険である。理由も同様であるが、こちらの方が混雑の事例として多いため、別事例として紹介する。

東京で例えると、つつじヶ丘〜狛江〜調布を結ぶ京王バス「丘31」は禁じ手のひとつである。ルートコストの概念についてはここでは詳しく述べないが、小田急沿線から京王沿線に向かう客がバスに集中し、拠点間のバス停から旅客を拾うことが難しくなり、混雑が発生することは想像に容易い。

同様のことは大都市内のバス路線にも言える。

地下鉄路線を短絡するような路線を設定すると、本来乗り換えを要する旅客がバスに流れてしまう。よって、都市内のバス路線の設定は十分に注意すべきである。


よって、Simutransにおけるバス路線設定において理想的であるのは、乗客数がピラミッド型になるような路線である。もっと現実の事例から挙げてみると、転回場や公共施設などを発着点とし、駅までを結ぶような路線がこれにあたるだろう。このような路線を複数設定することで、駅が効率よく広域の集客をすることが可能となるのである。


ただし、このような設定がすべての路線において可能であるとは限らない。方向や道路によって、別の駅が至近に存在し、バスで連絡したほうが現実的であるということも頻繁にあるため、柔軟な対応が必要である。

同じ路線の駅同士を連絡する場合は特に例外である。駅間にある市街地の需要を拾うことは非常に重要である。


一方で、違う路線・会社の駅と結ぶという場合には慎重な設定が必要だ。先に述べた通り、無神経な接続は混雑を呼び起こす。

対策方法はいくつかある。OTRP版「臨時系統」や「乗車/降車禁止」の機能を用いたり、std版ならば駅至近に置く停留所を統合せずあえて別のものとして建設すれば可能である。


2.路線の効率的な運営

繰り返しになるが、バスの特徴は小容量である一方で柔軟性が高いことである。地下鉄ほどの輸送力が求められない中規模都市では頻繁な運行が求められる。

しかし、いくら道路を拡幅拡張したところで、積極的な通過運転を行わない限り、バスが通るのは上下片側1車線のみであり限界がある。

そこで、「系統分散」の重要性をここでは説きたい。

実例を用いたほうがよいだろう。

これは「AHNS-C1」において私が「砂川」という街に設定したバス網である。ご覧の通り、バスの柔軟性を活かし、この大きくない街に多くの系統が設定されている。


(見にくくて申し訳ないです。自作の路線図を用意する予定でしたがあれよあれよと納期になり、間に合わなかったためゲーム内の路線図機能で代用します。)

注目すべきは「砂川市駅」と「新砂川駅」を結ぶ系統の数である。

経由地点のパターンは4通り、系統別に分けるとさらに増える。

この手法によって、砂川市街地に渋滞を発生させることなく、砂川市街地南側ターミナルの砂川市駅と北側ターミナルの新砂川駅の間の輸送力を確保することができた。

メインとなる系統は中心街からの需要がすさまじく、かなり頻繁な運行を強いられていたが、系統分散の効果で他の系統によって拠点間輸送を補完することができた。

系統分散のメリットはもう一つある。それは、「停車場所の分散」である。それぞれ路線ごとに違う停車位置を指定することで先行バス発車待ちの渋滞が発生せず、より効率よくバスを捌くことができる。


さて、お気づきの方もいるかもしれないが、単にバスを捌くだけなら振り分け標識を使えば差し支えはない。しかし、これから示す理由によって、振り分け標識は基本的に避けられるべきことがわかる。


何度も述べているが、バス最大のデメリットは1便あたりの輸送力の小ささである。途中停留所が複数ある路線においては、一定時間あたりの輸送力の不均衡は混雑具合の不均衡、車両あたりの利益の不均衡をもたらし、経営上の効率が悪化する。加えて、バスが集中するターミナルにおいては、発着台数の不均衡が渋滞を引き起こしてしまう。

これを解消するべく、私は「等間隔運行制御」の重要性を提唱したい。

ここではOTRP版をベースに方法論を展開するが、std版でも手法を若干変更することで可能である。


OTRP版のダイヤ機能の解説は省くが、基本的には「月あたりの運行本数」を設定、調整することで等間隔運行制御を行う。本数は1440の約数であることが望ましいだろう。(割り切れないような本数は計算上あまり美しくないというだけであるため、そこに無頓着なのであれば気にしなくてもよい)

ここで肝要であるのがターミナルや待機場所の規模である。待機を行う場合は、1停留所あたりの路線割当は必ず1つとしなければならない。複数の路線が同じ停留所に交錯して待機を行うと、ある1台の到着が遅れたときにその遅延が停留所を共有する路線に波及してしまい、単位時間あたりの輸送効率が落ちて混雑の原因になるためだ。これを念頭に置いて、私は先の「停車場所の分散」のメリットを述べていたのである。もっともこれは等間隔運行制御による副次的なメリットであることは記しておく。

もっとも、すべての駅や拠点に大規模なターミナルを建設できるとは限らない。用地の都合によっては小さなロータリーが精一杯であることもよくある。

この場合に使えるのが「営業所」である。


図:信濃鯖において実際に活用している図である。こちらの営業所はまだ発着台数は少ないが周辺の開発が進展すればにぎわう予定である。

バスの営業所は現実には主に車庫として使われるが、ここでは主に「待機、時間調整場所」として用いることで、用途は違えど、営業所を飾りではなく実際に活用することが可能になる。場合によるが、広い用地を必要とすることから、営業所が市街地の外れにあることがある。市街地を破壊することなく発着する系統の整理が可能であることも営業所設定のメリットである。


3.ターミナル論

ここまでに示した運営論において肝となるのが、バスターミナルの設計である。いくら効率の良い集客や等間隔運行をしたところで、バスが集中するターミナルや営業所の設計が悪くては、効果を最大化することは叶わない。

こちらもOTRP版を前提とした方法論になるため、ご注意願う。


ここで、OTRPの「追い越し仕様」を整理したい。


Q.「追い越し」ができない状況はどれ?



1.②にバスが停車していて、①にバスが到着するために追い越そうとするとき


2.①にバスが停車していて、②からバスが発進して追い越そうとするとき



正解は……?






1番 前が壁!

(テスト用マップの設定の都合により右側通行になってしまっているのはご愛嬌である。ちなみに左側通行でも同様の挙動を示す)


1.においては追い越すことができず、先行車の発車まで待機しなければならない。

これを解消するには、バス停の間を1マス開けることが必要である。


前述した「砂川市」において、最大のターミナルとして機能した「新砂川駅前ターミナル」においては、最終盤に改良工事が行われるまで2つの停留所マスが隣接しており、待機できる系統に制限があった。

図:↑改良前 ↓改良後


前述した追い越しの仕様を発見し、ターミナルの建設手法に大きく手を加えたのがこちらの「明前アイリス」である。



こちらの明前アイリスはAHNS3において、混雑するバス路線網を整理し、ハブアンドスポーク方式による運輸効率化を目指して建設した大規模ターミナルである。

直上には高層オフィスビルを設け、屋上は展望スペースとして開放している(という設定)。

開催期間の都合で明前市全体でのバス運輸効率化計画は実現に至らなかったが、大規模ターミナルのもつポテンシャルや設計方針は十分に示せたと考えている。

さて、明前アイリスの構造について説明したい。

同ターミナルの特徴は2層構造である。



1階は降車場とバス待機スペースである。実際降車場はなくてもよいが、スペースに余剰があったため(ちょうど駅の自由通路の前になるので)設けた。



2階はバス乗り場を7番線まで設けた。この二層構造の採用により、少ないスペースでより多くの待機場所を設けることができた。上下階とも、全ての道路が一方通行となっており、平面での動線交錯を避けている。

ここで重要なのが、うち1つの7番線を「待機設定禁止」としたことである。

これはスペースの有効活用を目論んだ設計である。将来的に1~6番線での待機では足りなくなったとき、1階の待機スペースでそれぞれ間隔調整を行った後に7番線に入線、客を載せて待機せずに発車させることで、合計12枠で待機することが可能になった。

また、それでも系統が溢れた場合、別の停留所、終点で間隔調整をする、あるいは調整が不要な系統を7番線に流すことを想定し、冗長性を確保している。


事例説明が長くなったが、ターミナル建設におけるポイントは簡単にまとめられる。

「少しでも多くの系統が待機設定でき、かつ余計な停車が発生しないような設計をする」ことである。この結果として明前アイリスは二層構造となった。

もちろん、平面でも類似の思想をもつ設計でターミナルを作ることは可能である。しかし、都市部においてはスペースが限られるため、現実世界でいうバスタ新宿のような立体設計にせざるを得ない(ただしSimutransにおいては自由に立ち退きができるため、用地については大きな懸念材料ではない)。(もっとも、駅前に超巨大な空間が相応しくない場合もあるため、景観に気を使いたい人は注意が必要である。)



4.さいごに

如何だっただろうか。

総括すると、現実の模倣は必ずしも良い結果をもたらさない、ということになるだろうか。前に述べたように鉄道路線の短絡は現実には頻繁に行われているが、Simutransにおいては大敵であり、ゲームにあわせて都度工夫をしなければならない。

バスの自由度の高さは都市のリアリティ、あるいは繁栄の解像度を上げてくれる重要なキーである。重要な路線には大型車、あるいは連接車を。コミュニティバス的な地域密着路線にはポンチョのような小型車を投入する、という車両選択の最適化もそのひとつである。それだけでも十分に、リアリティの強化に大きな効果がある。お読み頂いた皆様も、是非ともこの記事を参考に、「バス輸送」を積極的に活用してほしい。



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